株式会社インディージャパンは、2026年9月18日、東京・日本橋にて「産業イノベーションサミット『動×DO×道』~今やる。すぐやる。ずっとやる。~」を開催しました。

本サミットは、今まさにイノベーションに取り組む挑戦者が、実践者の経験や考えに触れ、視野を広げ、視座を高め、それぞれの活動につなげていくことを目的に開催しました。産業創出の最前線で挑戦を続けるイノベーター、研究者、事業責任者らを迎え、「産業創出」「大企業スピンアウト/カーブアウト」「イノベーション風土」の3つのテーマを軸に、それぞれの経験や実践から得た考えを語っていただきました。

当日は、企業・大学・研究機関・スタートアップなど、新規事業やオープンイノベーションに取り組む141名が参加しました。オープニングから3つのセッション、さらに交流会まで、多くの参加者が最後まで会場に残り、関心の高さがうかがえました。各セッションでは、実践者だからこそ語れるリアルな経験や思いが交わされ、参加者にとって新たな気づきや、次の一歩を考えるきっかけとなりました。また、交流会では、参加者同士の会話や意見交換が自然に生まれ、会場のあちこちで議論が続くなど、最後まで活発な交流が行われました。

本レポートでは、当日のセッションや会場の様子を振り返ります。

■産業イノベーションサミット 特設サイト:https://www.indee-jp.com/programs/innovationsummit2026/

当日プログラム

・オープニング
・第一セッション『技術は、どうすれば「事業」を超えて「産業」になるのか』
・第二セッション『チームの熱量と事業化速度を最大化するためのスピンアウト/カーブ・アウト』
・第三セッション『事業を生み出し続ける風土はどこから生まれるのか』
・交流会

オープニング・キーノート:失われた30年を超えて「自らゴールを描く」社会へ

【登壇者】津嶋 辰郎 :INDEE Japan 代表取締役 マネージングディレクター

オープニング・キーノートでは、INDEE Japan 代表取締役の津嶋は、サミットのテーマである『動×DO×道』を軸に、日本のイノベーションを取り巻く現状と、これからの社会に必要な姿勢について語りました。

サミットの冒頭、津嶋は「失われた10年・20年」と言われていたものが今や「30年」となっていることに触れ、新産業を生み出すという目的を持った“大きな挑戦”に取り組まなかったことが、その原因ではないかと指摘。これからの日本には、「与えられたゴールを実行する社会」から、自ら目指すべき姿を描き、そこに挑戦する「自らゴールを作る社会」への転換が必要だと呼びかけました。

挑戦を駆動するコンセプトとして示されたのが「動×DO×道」です。

「動」:心が動く(情熱やワクワク感を取り戻し、大きな意思を決定する)
「DO」:体を使って一歩踏み出す(思考を即座に行動・実践へ移す)
「道」:実現するまでやり続ける(途中で諦めず、道を追求・継続する)

このキーワードが、サミット全体の底流を貫くテーマとなりました。

第一セッション:技術は、どうすれば「事業」を超えて「産業」になるのか

【登壇者】
三枝 寛氏  :三井不動産株式会社フェロー(イノベーション担当)、RISE-A業務執行理事、LINK-Jシニアアドバイザー
白坂 成功氏 :慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科 委員長/教授、crossUサポーター、一般社団法人 Japan Innovation Network 理事
牛場 潤一氏 :株式会社LIFESCAPES 取締役会長(創業者・BMI開発者)、慶應義塾大学理工学部生命情報学科 教授
津田 真吾氏 :INDEE Japan 代表取締役 テクニカルディレクター/株式会社インディーキャピタル代表取締役

第一セッションでは、「新産業創出」をテーマに、それぞれ異なる領域で産業創出に取り組む登壇者が、自身の経験や活動をもとに「産業を生み出すとは何か」を語りました。

モデレーターの津田が「大きな目標を目指すようになったきっかけ」について問いかけると、三枝氏は、活動していると周囲から「社会的に価値のある挑戦だね」と何度か評価されたことから、「この取り組みは正しいから、いずれ世の中がついてくるだろう」と自身の目指す方向に確信を持つようになったとの経験を共有しました。白坂氏は東日本大震災をきっかけに、衛星写真をもっと社会でつかってもらいたいと強く感じたと言います。宇宙産業が社会に貢献できる可能性を改めて考えたことで、宇宙スタートアップの創出へとつながった経緯を紹介しました。牛場氏は、アカデミアから社会に出て事業化に取り組む中で、研究の世界とは異なる「もう一つの世界」があることに気づき、その奥深い世界に魅了されつつ、研究成果を社会に届ける活動を模索しながらも続けてきた経験を語りました。

産業デベロッパー、宇宙産業、医療産業と大きく異なるテーマで挑戦してきた三人という内容であった半面、多くの共通点がありました。1つは、目の前の技術や研究だけを見るのではなく、その技術を利用し、役に立てる人々に対する具体的なイメージを持っていたことです。そのイメージを持っていたからこそ、技術を社会につなげるための仕組みや人との関わりが欠かせないことに気づき、それぞれにさまざまな努力を行ってきていることが伺えました。また、登壇者は三人とも、新たな挑戦を始めたときの不確実性をプラスに「面白い」「ワクワク」と受け取っていたのも特徴ある共通点です。

第二セッション:
チームの熱量と事業化速度を最大化するためのスピンアウト/カーブアウト

【登壇者】
齊藤 隆夫氏 :株式会社iFactory 代表取締役社長 CEO
根井 正洋氏 :株式会社MENOU 取締役COO
津嶋 辰郎氏 :INDEE Japan 代表取締役 マネージングディレクター

第二セッションでは、「大企業スピンアウト/カーブアウト」をテーマに、大企業発の技術や事業をスタートアップとして事業化してきたiFactoryの齊藤氏とMENOUの根井氏が、それぞれの創業までの経緯と現在の取り組みを語りました。

「なぜ、大企業から新たな道へ踏み出したのか」という問いに対し、齊藤氏は、大企業では「不安の排除」を重視した意思決定が求められる一方、事業化のスピードを高めるには、より迅速に判断できる環境が必要だったと説明。技術や情報をより広く展開し、「今決める」ことができる環境で事業を進めたいという思いから、カーブアウトという道を決断したと語りました。根井氏も、大企業では品質保証などの要件があるため、2週間に一度のような迅速なアップデートは難しいと説明。現場で使われないまま眠っている従来型の検査装置をたくさん見ていたこともあり、スピードを求めてスピンアウトし、一日でも早く現場で使われる検査装置を届けたい、との思いを語り、「私としては、このチャンスを逃したくなかった」と当時を振り返りました。

「元いた会社とは、その後どういう関係になるのか」。これも、なかなか聞く機会のない問いです。iFactoryでは、前職を含む複数の企業と株主・パートナーとしての関係を築き、事業を進めるうえで必要な技術や設備の供給を支えてもらうため、長期的な関係づくりを大切にしているといいます。MENOUも、ニコンを主要顧客の一社とし、外に出たからこそ実現できた価格やスピードで事業を展開しています。

大企業から外へ出ることは、単に関係を断ち切ることではありません。スピードを高めながらも、これまで築いてきた関係や技術、人をどう活かしていくのか。二社の実践から、スピンアウト/カーブアウトならではの事業化のリアリティが浮かび上がりました。

第三セッション:事業を生み出し続ける風土はどこから生まれるのか

【登壇者】
仙石 太郎氏 :一般社団法人 Japan Innovation Network 代表理事
森田 健氏  :NEC ピープル&カルチャー部門 主席プロフェッショナル(カルチャー変革エバンジェリスト)
後藤 洋臣氏 :株式会社島津製作所 基盤技術研究所 みらい戦略推進室 室長
赤澤 礼子氏 :株式会社島津製作所 基盤技術研究所 みらい戦略推進室 企画グループ 副グループ長
星野 雄一氏 :INDEE Japan 取締役 組織開発・事業開発ディレクター

第三セッションでは、「事業を生み出し続ける風土はどこから生まれるのか」をテーマに、モデレーターの星野氏の進行のもと、単発のイノベーションで終わらせず、組織として継続的に事業を生み出していくための組織風土について語られました。

NECの森田氏は、10年間にわたる変革を振り返り、まず経営陣が「この会社をどうするのか、どこに向かわせるのか」という方向性を共有することから始めたと説明。役員のオフサイトミーティングを約400時間かけて行い、経営陣の意識を揃えたうえで、社員が変化を受け入れられる土壌をつくっていったと語りました。制度を変えるだけではなく、社員の声と向き合い、コミュニケーションや働き方を変えていくことが、組織変革には重要だといいます。

一方、島津製作所の後藤氏と赤澤氏からは、トップダウンとは対照的な「現場の自由な社風」が紹介されました。部門や階層にとらわれず、上司を飛び越えて直接協力を求めたり、複数の部門が自発的に費用を出し合って取り組みを進めたりするなど、自然と人が動き出す文化が島津製作所にはあるといいます。赤澤氏は、その背景について「本当に技術が好き」な人が多く、「この後どうなるんだろう」「これを変えたらどうなるんだろう」と考えているうちに、気づけば動き出しているのではないかと語りました。また、現場の好奇心を組織全体の力にするために、各部門の活動を統制・統合するのではなく、事業化の方法論と人のつながりをつくる風土づくりに挑戦しているという話をされました。

さらに、Japan Innovation Networkの仙石氏からは、「良い風土になったらイノベーションが起きるのではない。イノベーションに挑み続ける行動の蓄積が風土をつくる」という視点が示されました。イノベーションを一時的な活動ではなく、組織の中で継続して生み出していくための仕組みについても話が及びました。

トップが方向性を揃えるNECと、現場から自然と動き出す島津製作所。文化や風土の醸成に向けたアプローチは大きく異なり、興味深いセッションとなりました。そして仙石氏が語ったように、イノベーションに挑み続ける行動の積み重ねが、やがて風土になっていく。自社なら、どこから動かしていくのか。そんな問いも残る時間となりました。

参加者からはたくさんの感想が寄せられました

・事業から産業まで、夢の大きさが大事だと感じた
・産業化では横展開が進むことが大事だと印象に残った。実際の話を生々しく聞けた
・全てのセッションが濃く、実体験に根ざした話で、本会ならではの貴重さがあった
・自身も社内でイノベーションに取り組んでいるため、目からウロコの内容だった
・自分も活動を事業化しようとしており、それぞれのセッションで参考になる点が多々あった
・新しいことを進める難しさを改めて感じた。その難しさを言語化してもらえ、今後の進め方の指針になった
・非常に有意義な時間で、自分の中での気づきが多々あった。同様の会があればまた参加したい
・ぜひ大企業の経営陣にもこの話をしてほしい」

エンディング

最後に津嶋から、「動×DO×道」という今回のテーマに立ち返り、各セッションに共通していた「まず行動すること」の大切さを振り返りました。行動することで、顧客からの思いがけない反応や、自分たちでは気づかなかった発見が生まれる。そうしたきっかけが、それまでの思考の枠を外し、新しい道や可能性を見つけるきっかけになる。登壇者の言葉を振り返りながら、行動することから始まるイノベーションについて語りました。

交流会の様子

交流会では、セッションでは聞ききれなかった話や、さらに一歩踏み込んだ内容を語るアフタートークも行われ、登壇者と参加者との間で活発な交流が続きました。

「産業イノベーションサミット『動×DO×道』今やる。すぐやる。ずっとやる。」にご参加いただいた皆さま、誠にありがとうございました!

※登壇者の役職は、イベント開催時点のものです。