イノベーターは優秀なビジネスマンにあらず

クレイトン・クリステンセン氏らは、8年以上もの時間をかけ20名以上の起業家と3,000名以上の世界的企業の経営者を研究した結果、イノベーションは「知性」「発想力」や「ひらめき」といった認知的なスキルの違いではなく、課題を発見する「発見力」と呼ぶ“行動特性”がカギとなっていることを解明しました。この発見をまとめた『イノベーションのDNA』という著書には、発見力を構成する5つのスキルが紹介されています。発見力とは何かを理解することで、優れた起業家の行動特性から学び、人材育成のヒントが得られます。

発見力を構成する5つのスキルは:

  • 質問力 Questioning
  • 観察力 Observing
  • ネットワーク力 Networking
  • 実験力 Experimenting
  • 関連づける力 Associating

となっており、各人が持つ行動的なスキルによって得られたユニークな視点や独自の情報が関連づけられ、革新的なビジネスの源泉となっているのです。

このように発見力やイノベーターの行動特性をとらえることをイノベーターDNAモデルと呼んでいます。イノベーターDNAモデルを活用することで、社内起業家(イントラプレナー)育成や、新規事業プロジェクトのチームビルディングを効果的に行うことができます。

イノベーションのDNAを指標化したイノベーターDNA診断

発見力は、スティーブ・ジョブズ、アマゾンのジェフ・ベゾス、セールスフォースのマーク・ベニオフといったイノベーションを成功させた人たちに共通する行動特性ではあったものの、大企業の経営者に見られた「実行力」とは異なる特性でした。イノベーターDNAの研究を通じて、発見力と実行力の2つの異なる優秀さを指標化したのが「イノベーターDNA診断」になります。ウェブ診断によってイノベーターとしての特性を評価することで、発見力を高め、新規事業を成功させるスキルを可視化することができます。INDEE Japanでは日本語版の開発を行い、日本国内でも100社以上でイノベーティブな人材やクリエイティブなチームの育成に活用されています。

イノベーターDNA診断を受けると、発見力と実行力のバランスに応じて5つのイノベータータイプに分類されます。

相対的に発見力が優位な方はイノベーター(I)、実行力が優位な方はエグゼキューター(E)、バランス型はデベロッパー(D)となります。

5つのイノベータータイプを理解することで、新しいアイデアを発見する役割と、課題解決策を開発し、実行する役割などを整理し、効果的なチームビルディングができます。

イノベーションのDNAはどのように活用されるのか

社内イノベーター人材の発掘

イノベーションのDNAモデルを前提にすることで、大企業においても新規事業に適した人材の発掘が可能になります。業務遂行の優秀さとは関連なく、発見力を持ち合わせた社員を洗い出し、新規事業へとアサインすることが可能になります。埋もれたイントラプレナーを発掘し、適材適所を進める目的でイノベーションのDNAを用いることは有効です。

社内ベンチャーや新規事業プロジェクトのチームビルディング

発見力が高いだけではイノベーションは完成しません。実行力の高いメンバーとも協力し、優れたチームワークを形成する必要がいあります。メンバーがお互いの強みや弱みを把握するために効果的なのがイノベーターDNA診断です。

イノベーター・社内起業家人材の育成

従来の人材育成や人材開発は、既存事業に対する遂行能力(コンピテンシー)をベースに考えられています。同様に、新しい事業を成功させるコンピテンシーに該当するのが発見力です。イノベーションのDNAを基準とし、研修やワークショップ、配置転換などさまざまな人材開発施策をすることが可能になります。

日本企業のイノベーターDNA

イノベーターDNA診断は、世界各国で使用されており、日本だけでなく世界中の人と発見力や実行力の比較ができることができます。これまで日本では1500名以上の型がこの診断を受けました。その結果、5つのタイプのうちエグゼキューターが最も多かったものの、イノベーターは肉薄しており、エグゼクティブ・イノベーターと合わせると45%を占めることが分かりました。発見と実行の両利きであるデベロッパーを加えると、発見力の高いタイプが過半数を占めます。イノベーターは十分存在しているということは、その力を十分に発揮できていないのかもしれません。日本におけるイノベーターDNA診断結果についてのホワイトペーパーはこちらからダウンロードできます。