顧客インタビュー、その手法で本当に“お客様の声”を引き出せていますか?
「顧客インタビュー」と検索すると、「質問例」「実施方法」「成功のコツ」といった情報が数多く見つかります。しかし、それらを参考にしても、思うような成果が得られていないと感じている方も多いのではないでしょうか。イノベーションや新規事業の立ち上げにおいて、顧客の本音を正確に捉えることは不可欠です。にもかかわらず、アンケートや表面的なインタビューで済ませてしまっているケースは少なくありません。結論から申し上げると、アンケートだけでは顧客の本音に迫ることは難しく、インタビューであっても進め方を誤れば、重要な情報を聞き逃してしまいます。では、どのような点が間違いやすいのか。本記事では、「顧客インタビューでやってはいけないこと」と「顧客のジョブを引き出すための実践的なコツ」について解説します。
やってはいけない質問・3選
①どこを気に入って買いましたか?
この聞き方は初めてのN1インタビューでついついやってしまう間違いです。特に自社製品に顧客が気に入るべき「何か」があるはずだという希望的観測がそうさせます。でも例えば、喉が渇いているのに飛び乗った特急の車内販売を想像してみてください。ムカつきながらも買ってしまう飲み物だってあるはずです。私たちは、気に入らなくてもNHKやアマゾンのサブスクリプションに加入してしまっていることも多々あるように、気に入らずとも「雇用」していることだってあることを忘れないようにしなくてはなりません。
ジョブは製品軸からは導けないということに気を付ける必要がありますね。
②買った理由を教えてください
「買った理由」は、製品軸ではないので少しマシな間違いです。しかし、「理由」という言葉は、まるでロジックを聞かれているような気がして、回答者は「もっともらしい」理由を挙げることになります。もちろん、ド正直なインタビュー対象者もいるので一概には言えませんが、「お行儀の良い」回答をするのが人間です。例えばスマホを買った理由を聞かれれば、「情報収集」「業務連絡」といった社内稟議に通りやすいような答えをしたくなるのです。B2Bのジョブインタビューであればこのような表向きの理由を把握することも不可欠ですが、表向きのジョブ表現に騙されないよう注意が必要です。
③買ったものをどのように使っていますか?
どのように使っているか?というのはジョブ理論で言えば「リトルハイヤー」と呼び、身近な解決策をどんなシチュエーションで繰り出すか?を尋ねる問いになります。 これは利用頻度を高めたり、消費量を増やしたりするための、リトルハイヤーについてのインサイトが欲しい時には有効な質問です。
一方で「ビックハイヤー」、つまり購入動機を知りたいときに相応しい問いではありません。メーカーが、新たに商品を買ってもらいたいときにはビックハイヤーの問いが大切で、売れた商品の満足度を高めたい、あるいはアップセルのサービスを開発したいのであればリトルハイヤーを目指すことになるので目的に合わせてインタビューしたいところです。
どのようにお客様の本音を聞き出すのか?インタビューのコツとは
『買ったときの「いきさつ」を教えてください』
ユーザーインタビューでは、状況や回答に応じて、その場で柔軟に質問内容を変えていきます。ですが、鉄板の問いは「買ったときのいきさつを教えてください」ということになるでしょう。「いきさつ」というのは、漢字で書くと「経緯」と書きます。経糸(たていと)と横糸に喩えて、こまかな状況を知りたいわけです。特に、時系列で教えてもらうと、購入を検討した時点で持っていた情報や知識が明らかになります。たいていの場合、消費者は購入後の方が商品について詳しくなり、独自の見解を持ちます。前述の「お行儀の良い」回答は、現時点でさまざまな見解を持った上で精査された意見になりがちですが、購入時点では限定された知識や情報から判断していることに注意が必要です。
顧客が置かれている状況には、情報の制約があることに注意すると、単純にコミュニケーションの量を増やしても売れ行きが良くなることはないことに気づくはずです。
まとめ
イノベーションや新規事業の成功には、「顧客の本音」を理解することが不可欠です。
事業立ち上げの初期段階では、結果ありきの調査や仮説に沿ったアンケートではなく、お客様と真摯に向き合い、“何に困っているのか”“何を本当に望んでいるのか”を丁寧に聞き出すインタビューが重要です。
そのリアルな声こそが、新規事業の方向性を定めるヒントになります。
顧客インタビューに関するご相談やご質問がございましたら、ぜひお気軽にINDEE Japanまでご連絡ください。
インタビュー×Innovation×井戸端
事業開発を進めるうえで、お客様の“生の声”を聞くことは欠かせません。
しかし実際には、「誰に話を聞けばいいのか」「どこでそうした顧客と出会えるのか」といった点で悩まれる方も多いのではないでしょうか。
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ぜひご参加いただき、インタビューの悩みを解消する一助としてお役立てください。
• 前回のイベントの様子:https://blog.indee-jp.com/5223/
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