そもそもイノベーションとは何なのか

イノベーションとは、新しい価値が世の中にもたらされることを指すオーストリアの経済学者シュンペーターによる造語です。シュンペーターは、イノベーションを経済発展の原動力であると洞察し、「新しい財貨生産」「新しい生産方法の導入」「新しい販売先の開拓」「原料あるいは半製品の新しい供給源の獲得」「新しい組織の実現(独占の形成やその打破)」という5つの種類があると述べました。

技術革新は十分条件ではない

イノベーションはしばしば技術革新と訳されていますが、これは誤訳としか言えません。なぜなら、技術に変化があったとしても、世の中に新しい価値をもたらすとは限らないからです。

技術や発明は、物質の変化しか生みません。新しい技術が世の中に登場し、世の中が変化するかどうか、人々が価値を感じるかどうかは、「人」が決めます。人が元来望んでいた変化を加速するような技術は普及します。ところが、人が望んでいない方向の変化は、起きないものです。そうでなくとも、人や社会は変化を嫌うものです。人々は望ましい変化に対してすら、先延ばしにしたり、消極的であったりします。したがって、イノベーションを起こすには人に対する深い洞察が必要と言い換えることができます。

イノベーションは、新しい価値を世の中にもたらすという意味ですが、「発明×普及」と因数分解してみると多くのことがわかります。優れた発明にも関わらず普及しなかった数多くのビジネスには、人に対する洞察が欠けています。研究開発には5年10年という長い年月をかけたとしても、普及にはそこまでの時間をかけていません。金銭面においても、人のニーズについて研究したり、普及についての検討は技術の研究開発と比べると遥かに低予算で行われています。

イノベーション=発明×普及

 研究開発部門がイノベーションを創出できない理由もここにあります。研究開発部門はどこの会社にも存在し、研究者という役職も多数存在します。一方で、人や普及についての研究者や研究部門を持つ組織は極めて少ないのが実態です。しかし、社会学者のエヴェリット・ロジャースが書籍『イノベーション普及学』で提唱して以来、新しいアイデアや技術が社会に普及する理論体系は存在するのです。イノベーター理論とも呼ばれている普及理論は、ジェフリー・ムーアの有名な『キャズム』を通して知っている方もいるかもしれません。イノベーター理論では、採用者(もしくは顧客)の5つの層に順に普及していく過程を表しています。

  • イノベーター(新しいものをとにかく試す全体の2.5%)
  • アーリーアダプター(初期に採用し、影響力が大きい全体の13.5%)
  • アーリーマジョリティ(アーリーマジョリティの影響を受け採用する前期追随者、全体の34%)
  • レイトマジョリティ(大半の利用者が利用したのを確認してから採用する後期追随者、全体の34%)
  • ラガード(最後まで新技術を採用しない遅滞者、全体の16%)

 イノベーター理論には、他にも要件が示されています。例えば、新しい技術が採用されるための「比較優位」「適合性」「わかりやすさ」「試用可能性」「可視性」という視点もイノベーションを起こすには必要なのです。つまり、既存技術寄りも優れているだけでなく、現状の生活を大きく変えずに採用できることや、理解しやすいこと、気軽に試せること、新しい技術を採用したことがはっきりしていること、といった条件が整う必要があるがわかっています。

つまりイノベーティブになるには?

イノベーションを発明×普及とすることで、企業のイノベーション戦略は明確になります。INDEEでは、3つの階層がそれぞれイノベーティブになるための支援を行っています。

個人レベル

研究開発部門を持っている企業は、発明は得意です。したがって、研究者やエンジニアが「人は何を望むのか?」という視点を持つことで、遥かに価値のある研究開発を行うことができるようになります。「ジョブ理論」を学び、身につけることは決して難しくありませんし、楽しんでもらえています。意義ある発明のための活動であると、研究者に受け入れられているようです。

プロジェクトレベル

新規事業のプロジェクトは、さまざまな抵抗を受けます。企業の現状そのものが、新規事業を阻むと言ってもいいでしょう。その障害を乗り越えるためのノウハウと後押しを、伴走しつつサポートしています。現状の習慣、組織の現状を脱却する加速支援をプロジェクトレベルで行っています。

全社レベル

企業全体として、イノベーションを起こしやすくするためには個人レベルの活動を支援し、プロジェクトレベルの活動を推進することに加えて重要なことがあります。1つは、共通言語の構築です。イノベーションとは何か、どのような行動が奨励されているのかを全社でコミュニケーションできる共通言語体系が必要です。もう1つは、成長戦略そのものです。どの領域に、どのようにイノベーションを起こすのかを明確にすることで、各レベルの活動が円滑に進みます。イノベーションマネジメントの体制を組織内に構築します。