株式会社インディージャパンの津嶋が、横浜国立大学で開催された「大学技術移転協議会アニュアル・カンファレンス 2026(以下、UNITT AC)」に登壇しました。

「UNITTサーベイからみた10年後の産学連携の将来ビジョン」と題したセッションでは、日本の産学連携を取り巻く現状と課題、そして今後10年で求められる支援のあり方について議論が行われました。津嶋は創業前・創業直後のスタートアップと、事業そのものを共につくっていくアクセラレーターの実践者として、理研イノベーション 代表取締役社長の山本貴史氏、株式会社ケイエスピー代表取締役社長の窪田規一氏とともに登壇しました。モデレーターは、日本大学 産官学連携知財センター 副センター長で、UNITT調査広報委員会委員長を務める加藤浩氏が務めました。

■大学技術移転協議会アニュアル・カンファレンス(UNITT AC)とは

UNITT ACは、全国の大学・公的研究開発法人・TLO・産業界などから、500人規模の産学連携関係者が集まるカンファレンスです。研究成果の創出・保護・活用に関する課題について、産学連携に携わる実務者が議論を交わす場となっています。

「UNITTサーベイからみた10年後の産学連携の将来ビジョン」

米国では、長い歴史の中でVCだけでなく、エンジェル投資家、メンター、アクセラレーターなど、多様なプレイヤーがスタートアップを支える仕組みが形成されています。一方、日本ではVCの存在感が高まる一方で、創業前後の事業づくりを支えるプレイヤーや、研究成果を事業へとつなげるための支援機能には、まだ課題が残されています。こうした現状を踏まえ、3名の登壇者が実践経験を交えながら、これからの10年に向けた産学連携のあり方について、それぞれの立場から考えを述べました。

産学連携を「量」から「事業創出」へ

山本氏は、これまでの産学連携が特許数や共同研究の獲得件数など、「量」を追うことに偏り、必ずしも新たな事業やイノベーションの創出につながっていないという課題を提起しました。今後は、特許出願数や共同研究の件数、大学発スタートアップの設立数だけを評価するのではなく、アカデミアの研究成果から実際に新しい事業を生み出した数が重要になると指摘。また、大学による単独出願などを通じた知財化は重要である一方、特許の取得はあくまで事業化の必要条件の一つに過ぎず、知財を企業や事業へと結びつけるためには、教育、メンター、アクセラレーターなど、事業化の前段階を支えるエコシステムの充実が不可欠だと述べました。

技術を新産業へ育てるための「事業」と「知財」の設計

続いて窪田氏は、「大学の研究成果をいかに新産業に育てていくか」という観点から、技術起点で開発を進める「テクノロジー・プロジェクション」から、市場のニーズや課題を起点に研究開発や知財戦略を組み立てる「ビジネス・リフレクション」への転換が必要だと説明しました。また、特許は単に出願するだけではなく、事業展開を守るための知財ポートフォリオを構築し、事前に権利侵害の可能性を検証するFTO(Freedom to Operate)なども含めて、戦略的に考えることが重要だと指摘しました。さらに、成功するスタートアップを創出するためには、研究者と経営者が互いの領域をリスペクトし、目標やビジョンを共有できる強固なペアリングが不可欠であると強調しました。

創業前から「世界で戦える事業」を設計する

INDEE Japanの津嶋は、日本のスタートアップがスケールしにくい要因の一つとして、「創業前」の事業設計や市場検証が十分に行われていないことを指摘しました。特に創薬以外の多くのディープテック領域では、知財単体の排他力だけで事業の優位性を築くことには限界があり、そのため、技術そのものの価値だけを見るのではなく、その技術をどのように市場価値へと変換し、顧客にとっての価値へと翻訳していくかが重要と説きました。

一方で、現在の国内エコシステムでは、こうした創業前後のシード期において、事業設計や市場検証を伴走するプレイヤーはまだ十分とは言えません。津嶋は、この空白を埋める機能の必要性を示し、創業後に事業を考えるのではなく、初期段階からグローバル市場を前提とした大きな成長やチーム組成、それに必要な資金調達を見据えて事業を設計した上で会社を設立する重要性を提起しました。大学の研究者が持つ強い技術への思いと熱量を、正しい事業化の方向へとつなげ、世界で戦える新産業を創出すべきと呼びかけました。

今回のセッションでは、立場の異なる3名の実践者から、産学連携を「研究成果を生み出す仕組み」にとどめず、「新しい事業・産業を生み出す仕組み」へと進化させていくための視点が示されました。また、後半の質疑応答では、産学連携の支援者自身が、その技術について「自分が一番詳しい」と言えるレベルまで理解を深めることの重要性や、相手の話を引き出すヒアリング力、そもそも事業化に対するモチベーションがあるのかどうか、といった点についても議論が交わされました。さらに、本当に事業化したいのであれば、まずはチャレンジしてみることが大切だという、実践者ならではの示唆に富んだ話が展開されました。