2025年6月13日(金)に、大阪公立大学とシンガポールの南洋理工大学(Nanyang Technological University, NTU)は、大阪市内にて学術交流協定の調印式を執り行いました。本協定は、文部科学省による「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(以下、J-PEAKS)」の一環として、新たな共創の可能性の模索を目的としたものです。当日の調印式には、大阪公立大学・南洋理工大学・INDEE Japanの関係者が出席しました。
このたびの協定締結に際し、INDEE Japanは、両大学の連携に向けた初期の橋渡しから調整、そして連携体制の構築・実現に至るまで、一貫して支援を行いました。

調印式出席者による記念撮影
調印式出席者による記念撮影

●出席者の詳細や式典の様子:
大阪公立大学 公式HP「南洋理工大学と学術交流協定の調印式を実施」
https://www.omu.ac.jp/info/news/entry-18262.html

背景:日本のイノベーション課題とJ-PEAKSの役割

近年、日本の研究力の低下が国際的に課題とされており、文部科学省は令和5年度より、地域の中核大学や特色ある研究大学の機能強化を目的とした「J-PEAKS」を開始しました。この事業は、知識集約型社会への移行が進む中で、大学が新たな価値創出や人材育成の拠点としての役割を高めることを目指しています。また、地域の研究拠点形成や国際展開を推進し、国際卓越研究大学(※)との連携を通じて、日本全体の研究力向上と地域課題の解決を同時に実現しようとしています。さらに、政府、大学、企業を問わずイノベーションに関わる多くの課題が顕在化しており、これらの解決が社会全体の喫緊の課題となっています。
(※) 国際卓越研究大学:日本政府が、世界トップ水準の研究力を持つ大学を認定し、長期的に支援する先進的な大学。

大阪公立大学と南洋理工大学の連携経緯

大阪公立大学は、J-PEAKSに「イノベーションアカデミー事業の推進によるマルチスケールシンクタンク機能を備えた成熟都市創造拠点の構築」を掲げ、令和5年度採択分としては、公立大学で唯一、採択されています。2022年に大阪府立大学と大阪市立大学の統合により誕生した同大学は、エネルギー材料、ライフサイエンス、都市・防災科学、情報学等多岐にわたる分野で特色ある研究を展開し、国際的にも高く評価されています。

南洋理工大学は、シンガポールを代表する名門国立大学であり、国際的な研究大学として高く評価されています。英国のタイムズ・ハイアー・エデュケーション(THE)が発表した「THEアジア大学ランキング2025」では、1位の清華大学、2位の北京大学、3位のシンガポール国立大学に次ぐ4位にランクインし、東京大学(5位)を上回る順位を獲得しています。

大阪公立大学・中百舌鳥キャンパス白鷺門
大阪公立大学・中百舌鳥キャンパス白鷺門に、日本とシンガポールの国旗が並んで掲揚されている様子

INDEE Japanは、2016年より大阪公立大学(旧・大阪府立大学/大阪市立大学)の学生および大学院生を対象に、キャリア支援や教育プログラムの提供、メンタリング、ピッチイベントでの審査や協賛などを通じて次世代を担う人材の育成に継続的に取り組んでいます。文部科学省の助成により共同申請・採択された宇宙航空人材育成プログラム「PERSEUS」では毎年アントレプレナーシップに関する講演を行っており、Fledgeプログラムへの参加を通してイノベーション人材の育成にも積極的に貢献しています。

このたび、大阪公立大学より南洋理工大学との連携の可能性について相談を受け、INDEE Singaporeを通じた現地でのアプローチに着手しました。続いて、両国にまたがる大学間の価値提供仮説をすり合わせる調査や面談を重ね、連携体制の構築へと発展させることに成功しました。本連携協定を端緒に、教育・研究分野におけるさらなる連携強化と国際的な人材育成の推進が期待されます。

今後もINDEE Japanは、国内外の大学・企業・行政機関との連携を通じて、グローバルに活躍する人材育成と産学連携の促進、持続可能な社会づくりに貢献してまいります。

大阪公立大学・スマートエネルギー棟視察の様子
大阪公立大学・スマートエネルギー棟視察の様子

【大阪公立大学・イノベーションアカデミースマートエネルギー棟とは】
スマートエネルギー領域において、ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)化やスマートビルの社会実装に向けた学内研究シーズの実証実験及びオープンイノベーションの場として、企業との共創研究やスタートアップ創出を推進するための産学官民リビングラボ施設。
https://www.omu.ac.jp/i-academy/

■コメント

大阪公立大学 特命副学長(イノベーションアカデミー、産学連携)・藤村 紀文 教授

今回のNTUとの連携協定の締結にあたっては、基礎的な研究シーズの連携の可能性や実証実験に関する議論、さらには学生を含む人材交流など、多角的な観点から対面でのミーティングを重ねてまいりました。こうした準備に際しては、INDEE Singaporeのご支援のもと、ミーティングで不足していた点を現地で補っていただきながら、慎重に進めてまいりました。このたび、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)におけるイベントの機会を活用し、無事に調印式を執り行うことができ、大変嬉しく思っております。今回の協定締結は、まさに新たな連携の始まりであり、すでに、より多くの研究者が関わる共同研究や、国際研究グラントへの共同申請などへと発展しています。このような学術交流にとどまらず、学生間の交流も一層活発に進め、NTUと共に新たな価値を創出していきたいと考えております。

INDEE Japan 代表取締役・津嶋 辰郎

J-PEAKSの取り組みは大阪公立大学が持つ特色を強化し、国内外の大学および企業との連携を深める非常に意義深い機会になると注目しています。私個人としても大阪公立大(旧・大阪府立大学)を卒業して25年になりますが、今回はその活動の一助になれたことを大変嬉しく思っております。INDEE Japanとしては、本活動を軌道に乗せるため、研究開発の成果を社会実装へとつなげることを目的とした、企業との連携およびスタートアップ創出の支援に益々力を入れていきます。

INDEE Japanについて

INDEE Japanは2011年より、企業のイノベーションに特化し、コンサルティング、事業開発支援、ベンチャーキャピタルを展開してきました。

2019年にはイノベーションの重要な要素である海外展開の玄関口としてシンガポールを選び、子会社となるINDEE Singaporeを設立し、支援の幅を広げています。設立以来、INDEE Singaporeではロボットやバイオ、ヘルスケア領域におけるシンガポールおよび東南アジアでの事業開発を支援しています。

また、2024年7月には、未来を創造するためのディープテックスタートアップを増やし、事業及び資金の両面で投資先の成長へ支援することを目的に、ベンチャーキャピタルのINDEE Capitalを設立しました。